新店舗建築風景コメント付き総集編(後編)
2階ができて屋根ができると、ここでいったんの確認作業。
設計士(お客さん)と大工(お客さん)と設備(お客さん)と設備手配(お客さん)が集合。
サイクリングチームとレーシングチームに加えて、ビルディングチームが設立。
店長はもっぱらオヤツのお遣い担当。
足場に登るというのは初めての経験。
思ったよりもかなりグラグラするものなんだな、と。
屋根が出来たということは、屋根の上に登れるということ。
しばらくは風もなく暖かい日が続き、何かを考え込む時は屋上にいた。
新店舗の隣では千葉ベロドロームを作ってる。世界基準の室内競輪場とでも言おうか。
ベロドロームは現在は静岡県伊豆半島の山の上にしかなく、千葉市のは日本2個目、都市部近郊のものとしては初めてになる。
成田空港から近い世界基準のそれは一般ユーザーにも開放もするということで、フリーダムが何より期待しているところ。
外壁にベニヤ板が貼られると、次は防水シート。
外側は、芯材の木柱→ベニヤ板→防水シート→外壁材(サイディング)の枕木→サイディング→シーリング。
内側は、芯材の木柱→断熱材→ベニヤor石膏ボード→パテ→クロス。
つまり外側から内側までは、全部で9行程あるんだね。
ドアサッシがハマると一気にそれっぽくなる。ガラス張るのは6人がかりでも力一杯だったらしい。
もともとは平屋プレハブで作る予定だったけど、計画の途中から木造2階建てに。
本当の本当は鉄骨造の全面ガラス張りにしたかったんだけど、それだと総工費が桁違いとのこと(見積不作成)。
この頃から行政関連の書類作業はいったん終わり、お店に顔を出すことも増えた。
フリーダムは柏の会社で、会社の口座も柏。お金を借りたところは柏市の千葉銀行と松戸市の政策金融公庫なので、法務局や融資作業は毎回柏市まで行ってた。
新店舗が出来たら本社は千葉市に移すから、書類揃えるのもずいぶん楽になると思う。
私はまったく知らなかったんだけど、住宅における階段は階段屋さんがあるらしい。
つまり出来合いのキットをハメてるわけで、そういうものを使わないと予算は跳ね上がるらしく、設計と予算の段階では制限を受けやすいとのこと。
今回の建物は住宅ではなく完全な店舗オンリー。
となるとフリーダムと一般住宅との一番の違いは土足であること。
一時期の自転車ブームの時に、マウンテンバイクの金属クリートむき出しシューズが、コンビニ等いろんなお店の床を傷めることが話題になった。
ロードバイクのクリートはプラスチックだから自分自身は特に深く考えなかったけど、実際に店舗を作る側になった今では、それがどれだけ怖い存在だったのがよくわかる。
なにせ金属クリートによるピンポイントなほじくりに耐えられる床材ってめっちゃ高額なんだぜ。
フローリングも短期消耗品!なんて言われたら店舗はたまらないもんね。
天井には石膏ボードを打ち付けるための木枠がビッシリ。この中に電気のコードや水道ガスの配管が。
ベニヤ→防水シート→枕木。
外作業は足場をグルグルグルグルと回り続けて、違う工程が進んでいく。
万歩計ってこういう人のためにあるんだろうな。
内側の石膏ボードが貼り終わって全貌がつかめてからは、とにかく脳内で展示配置を固めることに努める。
店の中をウロウロして壁を眺める日が続いた。
引き渡しからオープン日までは短い。什器を一から揃え直す金は無いし、試行錯誤してる時間は無さそうだから一発で決めるしかない。だから脳内イメージの段階からなるべく鮮明にしとかないと間に合わない。
店の中が落ち着けば、雨風しのげて防寒もできてる。
となるとすでにタムロバとしては十分。
待たせる身と待つ身は違うのに、自分も待つ身になりたがってしまう。
ポンプ小屋作るぞーっ!
余ってる資材と余ってる道具と井戸ポンプのカバーを作る。
なんていうか大工さんってすごい。
だって私なんか木をまっすぐ切ることすら出来ないんだもん。
大工さんは木を簡単にシュゥゥンって切ってたけど、フリーハンドののこぎりではとてもじゃないけど出来ない。
命からがらポンプカバーを作ると、「なんだその鳥小屋は」と。
いやいや、気分は馬小屋ですよ!
ボードやベニヤの打ち付け穴やパネル間の隙間をパテで埋めたらいよいよ仕上げのクロス材と床材。
ボードは大工さん、パテはパテ屋さん、クロスはクロス屋さん、全部違うスペシャリスト。
私は常々、自転車整備士から職人性を感じないで来た。それがどうしてだろうとも考えつづてけたけど、最近それをすこし理解した。
違いのひとつめは経歴。
スペシャリストになるべく16歳や18歳で家づくりの世界に飛び込む建築業界と違って、サイクルショップは元選手のセカンドキャリアであることが多かったからだと気づいた。
それとサイクルショップに求められてることは、人に機材を合わせる能力だから、そもそもの存在意義が違うのだと気づいたのが2つ目。
綺麗に組み立てるのがゴールなのか、組み立てた先に真髄があるのか。
この違いだったんだな、と。
大工A「奥が……297。手前が…298。」
大工B「うぃ。」
F店長「今のとこ、両方297mmで揃ったら気持ちいいですね。」
大工「そうだね。でも木材に歪みがあるから、なかなかそうはいかない。」
ロードバイクのバーテープは約2,000mm。左右でそれぞれ巻いていった時に稀に1mmの狂いもなく巻ける時がある 、自転車の組み立てにおいてそれが最高に気持ちいい瞬間です、なんて話をした。
左右差1cmでも誤差は0.5%。でも目指すは誤差0.05%以下、それが木材よりも無機質なサイクルメカニックの到達点だろう。
壁の長さは店舗什器の大きさに指定してある。
新築祝いに店舗什器プレゼントしますなんて声が聞こえて嬉しい。でもフリーダムの什器はレンタルじゃなくて全て所有物なんだぜ!
古くなってきたら色塗るぜ!
2階は完成車を置くから、なるべくバイクが引き立つように床材はかなり白い色を選んだ。
一方で1階は整備で汚れるし、のんびり落ち着くスペースになるからもう少し暗くてしっとりした木目のものを。
風呂はリッチにTOTOのハイエンド。
コレクション用の自転車を売ったお金で風呂を買った。泣いた。
木造建築である以上は強度上必要な柱を抜き切ることができず、ヘンテコなスペースに区切りが生まれる。
ここはトレーニングスペースになる。
余裕を持って2台並行して置くことができ、大きな鏡が前面と側面に設置される。
自身のフォームチェックは、横から見た動画も大切だけど、本当に大切なのは正面から見た姿勢。
時代だからパソコンもズイフトも置くけど、スポーツの基本はやっぱり鏡。
ここは無料開放する。
私も朝晩は使うけど、営業時間中は勝手に使ってもらって構わない。プロですらローラー練習の時は輪になってお互いを見張りながらするんだから、みんなも。
客A「雨だからフリーダムでローラーしようぜー」
客B「おっけぃ」
A B「店長ローラー貸してー。」
店長「どーぞー」
終わったら洗車して風呂入って帰る。そういう活動拠点になればいいと思う。
外ではガス管や水道管。
これが終わったらコンクリ敷設。
内部は、床が終わってトイレや洗面所がくっついたら、いよいよ完成なんだろうな。