自転車・スペシャショップ雑談。
現在私が身を寄せているのは、東京で言えば渋谷や原宿にあたるような、上海中心部やや西側にあるスペシャライズドショップ。
上海には中心部に4つのスペシャライズドのコンセプトストアがあり(資本は全て別)、ここはその中でもっとも売上の高い筆頭ショップ。
外見や内見はそれほど日本とは変わらない。
売ってるものが同じなので、魅せ方も似通るのは当然だ。
「こないだサガンが来たアルよ」ってさらっと。だからお店のサガンモデルにみんなサインして貰ったんだーって。
「ほら、見てよ!サガンモデルの新型ヴェンジにサガンのサインあるアルよ」
超プレミアじゃないですか!じゃあ私もそれひとつ買います〜♪
ここのスペシャショップのスタッフ2人は、もともとスペシャライズドチャイナから来たんだそう。
日本のショップでも、もと代理店勤務の人が転職してくるケースが少なくないけど、コンセプト化が進みつつある業界としてはなにかひとつの専門家がスタッフになってくれることは心強い。
いままでは、例えばシマノもカンパもマビックもジップもコリマもイーストンも、新旧全部が出来なくちゃいけなかったものが、スペシャ専門店になればとりあえずロバールを覚えるだけで済むものね。
勉強量が少ない分、メカニックしてはそっちの方がはるかに楽だ。
スタッフの1人は英語がよく出来たので色々聞けた。新宿スペシャにも行ったことあるらしく、綺麗でワイドでビックリしたよーって。
私も遠くない将来で大型のスペシャコンセプストストアを作ろうと思ってるから、話が盛り上がって良かった。
フィッティングに関して少し。
上の写真は、奥がスペシャのリトゥール(旧BGフィット)、手前がシマノのダイナミクスラボ。
どちらも日本の価格で200万円前後する高額フィッティングマシン。
フリーダムではスペシャを扱ってないから、リトゥールに関しては私も自腹で他店にフィッティングしてもらったことがある。
フリーダムにはこの手のフィッティングマシンは今は置いてない。
現在のフリーダムのフィッティング方法は、客「店長、ちょっと走り方見てください」って言われたら、店長「あ、そしたら駐車場でいいので少し走ってみてください」ってチョロッと走ってもらって、2〜5分喋っておしまい。そこでお金は取ってない。
すごく雑にやってるように見えるかもしれないけど、実はこういった高額マシンを使って2〜3万円払って2〜3時間かけてフィッティングをした時に出てくる答えと、ほとんど変わらないと思う。
お客さん達は、長い時間と高いお金をかけてフィッティングしてもらったわけだから、さぞ自分は速くなった!上手になった!とい思い込むし、満足度も高いかもしれないけど、言ってしまえば要所をピンポイントで突き刺せば2〜3分で済むものを2時間も3時間も間延びさせてるだけにすぎない。
だってハンドルやステム変えてる時間にお金を払う価値は無いでしょ?
これはここのスペシャの人達も同じ事を言っていた。正直に言えば日本のショップスタッフも同じだろう。
「見ればすぐわかるよ。でもそれじゃお金にならないから。」
私と違うのは、それをブログでぶっちゃけてしまわないところだ。
フィッティングビジネスは今すごく儲かる。
日本はもちろん、チャイナでも自転車界の景気はそれほど良くないという。というのも通販の方が圧倒的に便利で、売上を喰われているからだ。
儲かっているのは、フレーム、ホイール、ワフーとパワーメーター、フィッティングの4部門だけであり、他のセクションは赤字だそう。
日本も同じだ。
これだけのショップにもかかわらずタイヤの在庫はほとんど無かった。タイヤというのは、自分好みのタイヤが決まって買うものが定着してしまうと、次第に通販で買うようになるからだ。
ウェア、シューズ、ヘルメットは全部辞めたいという。
フリーダムとまったく同じなのは、ただ合理的に考えるだけで自然とそうなってしまうからだ。
お客さんからみたら数百〜数千円の値引額も、店からみたら数千〜数万円の売上減になる。
だから失った数万円を補填する方法として、数万円のフィッティングビジネスが生まれたのだ。
ここまでは高額フィッターの悪い印象ばかりだが、良いところもある。
それは、店側の勉強時間が飛躍的に短くなることだ。
いままでは海外の論文(もちろん日本語じゃない)を熟読しなければいけなかった。
読むだけでなく、探し出し、理解し、走り方に落とし込み、最終的にはお客さんが理解しやすいような説明が出来るようにならなけらばいけない。
プロがプロを使って作った理論をアマチュアユーザーに当てはめる、そのためにために私たちスタッフがいる。
でもそのためには膨大な勉強時間が必要だからやらない店も多く、「〇〇さんみたいなベテランはもう走り方が出来てるから必要ないですよー」って誤魔化して逃げる。
だからいつまでたっても『ステム90cm理論』から抜け出せない。
でも本当は違う。
時代が変わって機材が変われば、走り方も変わっていく。最終的に地面を走ってくれるのは機材なのだから、機材に合わせて人間が変わらないといけない。
私がよく言うのは、「その辺のメタボのオジさんだってボーラ履けば40km/h出ちゃうんだから、40km/hで走る時のセオリーは理解しておかなくちゃいけない。それを怠るからボーラ履いて35km/hしか出ないんだよ」って。
機材の速さはサイクリングの楽さに繋がっているのに、店も客も走り方は関係ないって目を背けてシャットアウトしちゃうんだ。なのにヴェンジにロバール買う(売る)わけでしょ?
話を戻すけれど、本来なら最新の走り方を自分で勉強しなくちゃいけなかった大部分が、リトゥールやバイオラボを使うことで、メーカーが勝手に指示してくれるようになる。
能動的だったものが受動的になるというのが、どれほど楽な事か。
機械が随時、最新理論を更新してくれて、機械の通りに作業していれば及第点だなんて、自分が今やっているインプット作業からすれば無いに等しい努力だ。
私が高額フィッターをやらないのは、2〜3分で出来ることに2万も3万も取ろうと思わないから。
それってアコギな事だと感じて、すごく気にくわない。
大事なことだから2回言う。アレは気にくわないんだ。
でも時代はそっちに進んでいくだろう。フリーダムもきっとそっちに舵を切ることになる。
「元はと言えばお客さんが通販で物を買って実店舗にお金を落とさなくなったのが悪いんだよ」「お店はモノを買ってくれた代わりに耳よりな情報をサービスしてたのに」「今はお客さんは通販にサービスしてもらってるんだから、お店はおいそれと情報を出せなくなった」「お金あげない情報ちょうだいじゃ話にならないでしょ」
たったそれだけの話だ。
嫌なら通販の消費税率を上げて実店舗の消費税率下げろ。それなら元に戻してやる。
いつまでもそうやってダダをこねていると、先にフリーダムが潰れてしまう。
フリーダムはおそらく日記やインプレで伸びた店だった。
メディアに宣伝広告をしてない以上は自分のホームページで好き勝手言ってきた。
提灯記事が蔓延する中で、私の本音はユーザーに小気味よかった。他店に営業妨害だと言われたこともあるが、ならば理論で対抗してみろと熱かった。どちらがユーザー目線なのか、だったら俺の勉強量を超えてみろと叫んできた。
でもそれもなかなか出来なくなってきた。ユーザーがお金を落とさなくなった以上は、こちらからポンポン情報を垂れ流せないからだ。
そして、わたしの「本音ぶっちゃけ日記」が無くなればフリーダム最大な武器が無くなる。
何の特徴もない小さな店、それでは困る。
春になるとフリーダムが再開する。
さぁ、転換期はすぐそこだ。